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年金と株と国会議員

2004年3月17日

宇佐美 保

 

 先ずは、前述の「株価が上がったと喜ぶ愚」を補足致します。

本当に株価が上がったら世の中ハッピーになりますか?

私はそうは思いません。

一寸した例を考えてみましょう。

今の株価が1万円で、配当利回りが1%であるとします。

この株価が、(突然)3万円に値上がりしたとします。

となりますと、利回りは、0.33%へと下落してしまいます。

(とても悲しい事ではありませんか?)

 

 おいおい何を寝ぼけた事云ってるんだ!

値上がりしたんだから、売れば莫大な儲けだ!

 

 でも、そんな高い株売れますか?(しかも配当は殆ど期待出来ない!)

誰が買うのですか?

何を云うの!株は売買差益だよ!また、値上がりするんだよ!

 

 でも、株価が100円の値上がりした場合を考えてみましょう。

株価が1万円の時ならで、1%(=100円/1万円)の売買差益が出ます。

しかし、株価が3万円に上がっていたら、0.33%(=100円/3万円)にしかなりません。

同じ売買差益を出すには、300円の値動きが必要です。

値下がりでは損失ですから、当然値上がりを期待します。

 

 そして、いつの日か、株価は5万円にアップしてしまったとします。

(もう利回りは全く期待出来ませんから、頼りになるのは、売買差益だけです。)

今まで、1万円投資すれば儲けていた売買差益の利益を得る為に、5万円と今までの5倍も投資しなければならないのです。

そして、5倍の500円の値動きを期待しなければならないのです。

こんなにも投資効率の悪い株を誰が買うのですか?!

(そんな事云っても、「株価に見合う分だけ会社には土地などの資産があるから大丈夫」とバブル前は云われつつ、株価は上昇しました。

しかし、その会社が倒産すれば、そんな資産は、債権処理に回され株主へは廻ってこない事を私達は勉強したはずです。)

 結局、値上がりの最後は、誰も買い手が付かなくなって暴落するのです。

 

 ですから、前述した「株価が上がったと喜ぶ愚」となってしまうのです。

そして、株の本道は配当利回りなのです。

配当利回りを無視した株への投資は、あくまでも投機なのです。

否!投機と云うより、賭博なのです。

(只、若干ながら経済情勢もある程度は考慮しますから、サイコロ、花札、バカラやポーカー賭博と云うより、血統馬体なども考慮観察する競馬に近い存在でしょう。)

 

 この辺で、前文「株価が上がったと喜ぶ愚」の補足は終わりにして、今回の本題に入ります。

 

 先月(2月)12日の衆議院予算委員会に於ける民主党枝野議員の質問はなかなか見事でありました。

でも、枝野議員も年金の件を勘違いしておられるようでした。

 

 そこで、枝野議員と坂口厚生労働大臣等の質疑応答(予算委員会のホームページ議事録)を抜粋し検証して行きたいと存じます。

 

質疑応答に見られる問題点

 

1)国民年金、厚生年金の積立金が株式等に運用され、その株式運用の現時点での評価は、買ったときの値段よりも 六兆七百十七億円のマイナス。

2)国民年金、厚生年金の積立金の運用のうち株式には全体では二二、三%

3)ところが、国家公務員共済の積立金の運用のうち国内株式三・六%、外国株式が二・九%

4)枝野委員 それぞれ、その株式運用によって評価損なんですか、評価益なんでしょうか。……麻生国務大臣 株式のことですから上がり下がりがあっておりますが、平成十五年三月で一兆一千億の赤、同じ年の十二月で三千八百の赤という数字であります

5)枝野委員 ……グリーンピアなどの施設、幾ら使ってしまったんですか。

坂口国務大臣 ……全体といたしまして約三千八百億円、そういうふうに思っております。

枝野委員 ……国家公務員共済年金の場合はございますか。どの程度ありますか。

谷垣国務大臣 突然のお尋ねでございますが、ちょっと今までそういうようなことは議論いたしておりませんので、調べまして、また後刻御報告いたしたいと存じます。

……

枝野委員 そうですね。直接、グリーンピアみたいなものはやってないんですよ、国家公務員の共済では

以上を纏めるように、枝野委員は次の質疑をしています。)

6)枝野委員 ……ほとんどの国民年金、厚生年金、つまり国家公務員、地方公務員以外の圧倒的多数の国民の中で利用した人なんかどれぐらいいますかというような保養施設のために三千八百億円も勝手に使って、そして大損をしている。そして、株のところでも、公務員共済のところではほんの少ししかやっていないところで大損をしている。
 
こういうところの不公平が国民の皆さんの年金不信を高めているんじゃないか。そういうところにきちっとメスを入れて、公務員だろうと、民間企業に勤めていようと、自営業者だろうと、公平に、フェアにやったらいいじゃないですか。例えば、年金の積立金の運用なんというのは、国民年金と厚生年金と一緒にしているんですから、共済年金も一緒にしたらいいじゃないですか。どうですか。

 

坂口国務大臣 合併の話につきましては、厚生年金それから共済年金との統合化の話につきましては、財政の統合化を現在進めていこうというお話し合いをしているところでございまして、その前に、国家公務員の共済と地方の共済との財政の一元化をまずやっていく、そして、その後で全体としてやっていくということでございます。

 

ここまで抜粋しました枝野委員の質疑は実に的確と感銘します。

でも、次の質疑応答から、やはり、枝野委員も年金の本質を見失っているの思いを強くしました。

私は、先ず、年金は積み立て方式が本質であって、世代間扶養は役人達の言い逃れとの認識で持って、年金問題を一度しっかり総括すべきと存じます。

 

7)坂口国務大臣 年金の積立金につきましては、もうこれは申し上げるまでもなく、年金に加入していただいている皆さん方にその積立金の果実を配分するということが一番大事なことだというふうに思っております。
 今までの年金の制度が積立制度を中心にしてスタートしたことは事実でございまして、それが賦課方式にだんだんと移行していることも事実でございますけれども、その中でたまりましたその百四十数兆円の積立金というのは、これは年金に加入していただいている皆さん方に還元をするために使うということであるというふうに思っております。

……

枝野委員 ……積立金の話に戻ります。
 積立金は、確かに歴史的な経緯としてここまで積み立ててきた。そして、年金が成熟をしてきたことによって、今受け取っている方のかなりの多数の部分は二十ぐらいから年金を納めてきた方にもうなりつつあります
 そうだとすると、ここから先は、少なくとも、もう二十年か三十年ぐらいはともかくとして、つまり、年金制度が始まる前から二十歳以上であった方の次の世代にかわっていけば、年金の本来の意味である世代間扶養という意味に基づいて、そのときの現役世代がそのときの高齢者を支えるという制度になっていっておかしくない。しかも、そのプロセスの中で、高齢化のピークという、保険料を上げないと大変だ、年金給付を引き下げないと大変だという時代をちょうど幸いなことに含んでいるわけですから、これから五十年ぐらいかけて今の積立金を、余り前半の方で切り崩しとかされると困りますけれども、これから五十年の後半の方をピークにして今ある積立金を切り崩していって、最終的には一年分ぐらい持っていれば十分だと思いますけれども、そういうことをすべきではないですか

 

 以上の質疑応答の中に見られますように枝野委員は実に適格に年金の問題点(積立金に関しては兎も角)を指摘しています。

そこで、これらの問題点を私なりに以下に纏めさせて頂きます。

問題点:1
 
坂口国務大臣が“今までの年金の制度が積立制度を中心にしてスタートした”と答弁しているのに、枝野委員は“年金の本来の意味である世代間扶養”と誤解してしまっているくらいに、役人議員達(?)によって年金の本質が「積み立て方式」から「世代間扶養」に変節されてしまった真の原因は何か?

 

(更に、週刊ポスト(2004.3.26)の紙上で「年金博士」北村庄吾氏と「代行返上」の著者幸田真音氏が「年金」についての対談中、両氏とも“年金は支える人がいないと成り立ちません”と、年金「世代間扶養」論に洗脳されてしまった発言をしています。

私は、ご両人に質問します。

では「個人年金」はどうなるのですか!?

 

一般的には、この原因は「少子高齢化現象」とされていますが、私は先ず「年金運用のミスを完全に膿み出しすべき!」と存じます。

そしてこの運用ミスの一端は、枝野委員による次の質疑に認められます。

 

問題点:2
 年金の運用の仕方が不公平(出鱈目)

2-1)国民年金、厚生年金の積立金が株式にどんと投資して大損をしているのに、国家公務員の共済年金のとこ      ろは、株のような変動の大きい部分のところにはほんのちょっとしか運用しないので、損が出ても小さい。    2-2)国家公務員の共済ではグリーンピアみたいなものはやってないんです

 

更には、公務員の宿舎の建設には、共済年金からではなく、国民或いは厚生年金から捻出している事を、私はテレビなどから知りました。

 

 日頃テレビで「ナベツネの提灯持ち」的発言(私にはそう思えるのですが)を繰り返している評論家の三宅久之氏は、テレビ朝日の番組「たけしのTVタックル」中で、

“だったら、赤字の厚生年金でなくて、黒字の共済年金を使って建設すれば良いのではないか!


と年金積立金の趣旨を全く理解していない発言をしていました。

年金積立金は、その運用によって利益を出さなければいけないのです。

公務員の宿舎(安価な家賃)から利益が出てきますか!?

 

 更に驚く事に、週刊ポスト(2004.3.26)には、次のような記事があります。

 

われらサラリーマンの年金がなぜ財政難に陥ったのか。……

 厚労省=社会保険庁の役人たちは、年金のカネで全国にカルチャーセンターを建てまくり……

 厚労省=社会保険庁によるカルチャーセンター建設の裏には天下り先づくりの狙いが秘められている。

 同省は83年から90年までの8年間で48か所の社会保険センターを建設したが、それを運営するために都道府県ごとに財団法人『社会保険協会』をつくり、OBが役員として次々に天下った。……

 厚労省が年金のカネで建てた施設は全国265か所にのぼり、総額なんと15700億円が使われた。……

 そればかりではない。厚労省は社会保険庁を通じて6つの天下り団体に年間132億円04年度予算)もの年金資金を補助金(委託費)として流し込み、赤字を表面化させないようにこっそり経営支援していることがわかった。……

 

 こんな事が許されるのですか!?

役人達は私達の年金積立金を何だと思っているのですか!?

(拙文《インチキ評論家が年金は黒字と嘘を言う》に書きましたインチキ評論家の紺谷典子氏も信じ、且つ、宣うが如く「積立金はヘソクリ」と役人達も解釈したのですか!?

冗談ではありません!

だったら年金制度は最初から積立金方式から逸脱してしまって居るではありませんか!)

積立金はあくまでも年金を将来受け取る私達のお金を預けて、その運用を委託しているのです。

従って、積立金から予定の(確か5.5%)運用利益を出さなくてはいけないのです。

積立金に無駄な金など無いのです。

 

 前述の週刊ポストには、次の記述もあります。

 

「ちょうどバブルの全盛期で年金保険料収入は伸びていたから、カネは潤沢にあった

そこで、前の施設と同じ名称では不要論が起きかねないため、社会保険健康センターと名前を変えて各地に2か所目の施設をつくった

 

 冗談じゃありません!

バブルでカネが潤沢の際に、今日の低金利時代に備えて、蓄えをより増やすべきだったのです!

 

 斯くもいい加減に年金積立金を食い潰してしまった責任を、一度はっきりと明確にすべきなのです。

そして、年金積立金の収支決算を明確にすべきなのです。

ところが、その際、前述の麻生大臣の答弁

 

株式のことですから上がり下がりがあっておりますが、平成十五年三月で一兆一千億の赤、同じ年の十二月で三千八百の赤という数字であります

 

のように、積立金で買ってしまった株の評価が、評価時点の株価次第で上下して曖昧になります。

(グリーンピア等の建物の評価は、ゼロとして査定すべきでしょう。)

そこで、株の本来の姿である「配当利回り主義」に徹して、時価株価を予定していた積立金運用利回り5.5%に換算する事も一つの手段だと思います。

 

 例えば、今日時点のトヨタの株価は、3800円で、配当利回りが0.95%ですから、予定利回りの5.5%にこの株価を換算しますと、

 

3800×0.95)/5.5=656円

 

となります。

こうして計算すれば、株価が上がれば、それにつれて利回りも低下しますから、時価に左右されない株価評価が可能です。

(なにしろ、配当金=時価×(その時点の利回り)=3800×0.95 なのですから。)

それ程、無茶な評価方法でないと存じます。

 

 年金改革だ!と叫ぶにしても、今までの年金の不備が何処にあったのか明確にしてから叫ぶべきです。

積み立て方式の何処に欠陥があったかを絶対に明確にすべきです。

 安易に、役人達の責任逃れの呪文である「世代間扶養」を口にしてはいけないのです。

 

若し積立金方式が駄目なら、「個人年金」は成立しません

「個人年金」こそは「積立金方式」なのですから。

 

 傷だらけになってしまった現状の年金制度を、あくまでも「積立金方式」として維持してゆくには、どうすべきかを議論すべきなのです

 

 その際、足りない分(将来の物価変動分)などを、消費税で補うのか?

そして、枝野委員の次の発言も貴重です。

 

 今から新しい道路をつくって、二十年後、だれが使うんだ。今から新しい鉄道を敷いて、二十年後、だれが使うんだ。もちろん、全部なくていいだなんて言うつもりはありません。……今までこうやって人口がふえている時代に使っていた税金の使い方としては合理性があったけれども、人口が減っていく時代には合理性がなくなってきた部分のところの税金の使い方を大胆に削って、その金を年金に回していく。これがまず最初にやるべきことじゃないですか。


 私は、(本当は国民と云うより、自分の地元の方々への約束のくせに!)今更、

 

 “国民に約束したから”

 

と云って、高速道路を造り続けようとする国会議員達に怒りを感じます。

高速道路しゃぶって生きて行けと云うのですか!?

年金は国民への約束ではないのですか!?

(補足)
 積立金の無駄遣いを、全て「国民年金」「厚生年金」に押し付けた「共済年金」は、実際に黒字なのか赤字なのか?はっきりさせて欲しいものです。

(私は、黒字と思っています。「共済年金」が黒字であることがはっきりしたら、「国民年金」「厚生年金」の運用の責任問題がはっきりしてきます。)

 しっかり管理してきた「共済年金」が、万一、赤字なら、「積立金方式」が「世代間扶養」と移り変わって行く必要性の一部は認めましょう。

 最後にもう一度書きます、

 「共済年金」の実体はどうなっているのですか!?



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